珍スポットオーナーはマーケティングの天才である。
香川県といえばうどん。うどんといえば香川県。
香川県で飲食店で有名になるためには「おいしいうどん」のお店でないといけない。
だが、そんな中で大人気のたこ焼き屋がある。
「たこやきマークン」だ。
たこ焼き屋らしくお店に大きく書かれた「あげたこ焼き」の文字よりも
「健康効果 水素水コップ一杯110円」が目立つあたり、すごいセンスだ。
常軌を逸した店構えながらも、テレビや雑誌に何度もとりあげられている。
今回は「たこやきマークン」のご主人にお話を伺い
そこからマーティングの極意を考察したい。
たこやきマークン
住所:香川県高松市観光町558−16
営業時間
平日11:30~20:00
土日11:30~21:30
ホームページ
(掲載されてないメニュー、終了メニュー多数有り。)
たこやきマークンとは
たこやきマークンはテイクアウトもできるし、店内でも食べることのできるたこ焼き屋さんだ。
たこ焼きの本場大阪では、オシャレなたこ焼き店が多いが
たこやきマークンこそ「ザ・たこ焼き屋」ともいえる良い感じの店の雰囲気。
大阪にこのお店があっても違和感が無いのではないだろうか。
店内のいたるとこに黄色い紙に手書きでメニューがあちこち貼られている。
たこ焼うどん
大きく書かれた「たこ焼うどん」という文字にここが香川なのだと実感する。
「お好み焼きをおかずにご飯を食べる」が大阪府民なら
「たこ焼きまでうどんの具」にしてしまうのが香川県民だ。
お店のサンプルにはかき氷にたい焼きが突撃したような「たい焼きかき氷」
かき氷片手にあげたこ焼きを食べたら爪楊枝から落として
偶然かき氷に落ちたような「あげたこ焼きかき氷」
極めつけは
かき氷容器にうどんを盛り、その上にかき氷を盛り、うどん出汁をぶっかける「かき氷ぶっかけうどん」というのもあった。
多少の失敗は容易にフォローできる
「最初は普通のお店だったんだけど
テレビに出るには変わったことをしないとと言われて
10円かき氷というのを売り出したら、テレビ局がいっぱい来てね。」
上の写真が10円かき氷、どうみても10円の量ではない。
50円でも安いくらいだ。
「ただ子供が10円かき氷を安いから10杯くらい頼んでくから
「おじちゃん死んでしまうわ!」と言い、その日から一人5杯までとか
どんどん制限をかけていったんよ。」
ご主人は笑顔で語る。
薄利多売のせいで、お店は繁盛したが
ご主人はかき氷を削りすぎて、疲労困憊。
そこで一日制限をかけることで、その問題をクリアした。
慎重な経営者なら
「10円でかき氷なんて原価が割れてる商品を売ったら
むちゃくちゃな客がどんどん買っていくからダメだ!」と想像し発売はしないだろう。
しかし、ご主人はとりあえず販売し大ヒット。
そこに孕んでいた問題もあっさりクリアすることで、10円かき氷は見事な広告塔に上り詰めた。
イベント感を出す
このたこやきマークンの立役者ともいえる10円かき氷は現在、販売していない。
「どんどん新しいものを作らないと飽きられる。」
大ヒット商品である10円かき氷をあえて捨ててどんどん新しい商品を生み出しているとのこと。
「去年の大ヒット商品がこれ、うどんかき氷。
うどんを凍らせてかき氷にする。いろんなところで紹介されたんよ。」
ご主人が冷凍庫から、氷付けのうどんを持って語る。
香川県民の秘法みたいでちょっとカッコいいぞ、うどんアイスキューブ。
毎年、時期ごとに新しい商品を考えており、今も思案中とのこと。
「この前作ったけど没になった、うどんカレー。
カレーうどんはカレー出汁にうどんが入ってるけど、これはうどんにカレーを練りこんでるんよ。」
思わず、私の心はワクワクしてしまった。
基本的に奇食系のお店というのは、商品がヒットすればそれを置き続けている店舗がほとんど。
しかし、たこやきマークンはあえてヒット商品を捨てることで
新たなセンセーショナルな商品を創造し提供できる。
ミュージックプレイヤーといえばiPodとなった時にiPhoneを作り上げたスティーブジョブスのようだ。
おもしろく、お客様を気遣う
私はたい焼きうどんを注文した。
「うどんは自家製なんよ。」
なんということだ、うどんの上にたい焼きが乗っているだけでおもしろいのに
麺は自家製の手打ちにしてしまうなんて。
商品へのこだわりは半端ではない。
大阪風のうどんを思わせる上品なうどん出汁に
最近流行の讃岐うどんはコシの強さを売っているが
ご主人の手打ち麺はそれを感じさせない、やわらかめの麺。
讃岐うどんというより、全体的に大阪や福岡でも人気がでそうな味わいだ。
そこにどこからほどよい甘さのあんこと皮のいたずらなたい焼き君がうどんの上に不時着。
いや、ここまで堂々と来られると不時着ではなく、着地か。
あん餅を入れる雑煮があるくらいだから、このうどんも別にまずくは無い。
が、別々のほうがやっぱり良いと思う。
気になっていた「かき氷ぶっかけうどん」も注文しようとしたが
「今は寒いからやめとき。」
なんということだ、体を気遣ってくれたのだ!
もし、売り上げ重視のダーク奇食屋ならばどんどん商品を食べさせ
売り上げを伸ばすことだけを考えるだろう。
しかし、たこやきマークンはそんなことはしない。
「こぼれたこ焼うどんは桶にうどんを入れて
その上にたこ焼きを32個乗せとるから一人じゃ無理やね。」
ご主人はおススメできない商品はキチンとおススメしない。
猫も杓子も「お似合いです。」とほめまくる服屋の店員とは大違いだ。
ご主人はさらなるヒット商品を考え、さらに売り上げを伸ばそうという野心。
しかし、悪ふざけのような方向性の奇食も多々ある中、それに待ったをかけるご主人の優しさ。
この二律背反した感情こそが「たこやきマークン」を成長へと導いたのではないだろうか。
まとめ
多少の失敗は容易にフォローできる
新たなことに挑戦するのに予想や計算だけであきらめるのはいけない。
イベント感を出す
どんなに商品がヒットしても、それを捨てる勇気をもつことで
お客さんを惹きつけ、話題を呼ぶ。
おもしろく、お客様を気遣う
おもしろさが第一であっても、お客様を気遣う心配りを忘れないこと。
(この記事を参考にして、なんかやらかしても責任は負いません。)